通訳訓練法で鍛える上級リスニングスキル

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英検準1級に手が届きTOEICで800点以上をマークできるようになると、英語熱が一層高まる学習者の方も多いのではないでしょうか。これまでの努力が目に見える結果として現れるのは、やはり嬉しいものですね。同時に一定の英語レベルに到達したからこそ生じるスキルアップ関連の悩みも、中級から上級に移行するこの時期に多いようです。

英語に限らず習得に日々の努力を要するタイプの学習で、いわゆるスランプに陥ったと感じる時期が存在するのは、多くの方が経験をともにするところでしょう。努力が結果に反映されたと感じづらく、本人は停滞期と感じてしまうこのplateauプラトー期は、次への飛躍の準備期間と捉えて頂き、その間に基礎力の土台をゆるぎないものにしておかれることをお勧めします。

ここでは英語力のレベルを問わず活用でき、とりわけリスニング力アップに有効な通訳トレーニングをご紹介していきます。

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シャドーイング

プロ通訳養成校で行われている各種トレーニングが、英語教育現場で導入されて久しい今、既にシャドーイングをウォーミングアップとして実践している方もいらっしゃることでしょう。

音声教材から聞こえてくる英文を、1~2秒遅れでスタートしそっくりそのまま自身の口頭で再現するのがシャドーイングです。

発音・イントネーション・前置詞・音のリンク・固有名詞に至るまでそっくりそのままコピーするのは、意外に多くのエネルギーを要するものです。またスピーカーの発話よりスタートが遅くなればなるほど、難度は上がります。

英文を聴きながら口では少し前に流れた音声を発しているため、
①音を頭にとどめ
②それを口頭で再現しながら
③今流れている音を聴く
といったマルチタスキングをこなすよい練習になり、英語を聞く際の瞬発力養成・滑舌の改善にもってこいのトレーニングといえます。

最初はスクリプト付き3文程度から始める事も可能ですし、腕に覚えのある方なら、事前情報のない音声教材で決めた分数(5~10分程度)の間 シャドーイングを行い、どの程度内容がとれたか、自身の発話が続いたか、スピードについていけたか等の評価項目を決めておくと上達の目安となり、現在のレベルを把握しやすくなります。

筆者が通訳訓練校に通学し間もない頃、” 毎日15分、好きなマテリアルでシャドーイング ” とのタスクが講師から課されました。

当時はTBSのイブニングニュースが2か国語放送対応であったため、言われた通りHead Setを装着し、15分間ニュースから、街角インタビュー、ポップカルチャーに至るまで自身の口頭で、英文の影になるべくその再現に努めました。英語を聞いた際の即応性を高める目的で始めましたが、意外な収穫であったのは、何気ないが微妙なニュアンスを持って語られた口語表現の英訳を学べたことでした。

”この文脈で その形容詞の選択か..” ”簡潔だが被害者の感情を反映した訳だな”など、気になった表現が強い印象を伴って記憶に残るうえ、録画映像で和文・英文を聴きなおすため、高い学習効果が得られました。BBC, CNNといった英語圏で放映されるニュースとは性質の異なるマテリアルとして、国内2か国語放送を使われるのも一案です。

このように日々の10分程度のシャドーイングは、集中し継続する事で、上級へのステップを後押しする基礎力を育んでいくといえるでしょう。

リテンション

リテンションは、保持力・維持・記憶といったさまざまな訳がとれますが、ここでは一定量の音声、あるいは記述された情報をとどめおく力と理解頂くとよいでしょう。

実は前述のシャドーイングを行う際も、リテンションの力が使われています。シャドーイングとは異なり、一字一句をそっくり再現する必要のない場面で、重要情報のみを選択的に覚える練習としてリテンショントレーニングを活用することができます。その点からTOEIC PART4 ( 40秒前後の英文を聴き、問題用紙の3つの設問に回答する問題)の対策としても有用です。

リテンションのセルフトレーニング導入期には、日本語のマテリアルを使う事も可能です。新聞記事やTV番組の音声など好きな素材を選び、読む、聴くなどして、情報をどの程度正確にとれたのかを評価していけばよいのです。

当該記事を読む回数や音声を聴く回数を厳密に設定し、自らがとれた情報(5W1H)の正誤確認が行える環境で行うことがポイントです。

一連の作業を英語のマテリアルで継続的に行えば、当然、語彙力の増強・落としやすい音への気づきとともに、一時的にとどめておく情報量の増大が期待できます。高いリテンション力は英語学習に留まらず、業務や日常生活場面でも活きてくることでしょう。

最後に

今回ご紹介したシャドーイング、リテンションは大変地味な訓練法ですが、継続することでゆるがぬ英語の基礎力を養います。

実務に追われるプロ通訳の中に、この過程をスキップした方はきわめて少ないのではないかとの印象を筆者は抱いています。上達を実感できぬ時期は大変苦しいものですが、英語を始めたこと、そしてここまで上達してきたことをしっかりと評価され、ご自身の英語道を極めてください。