奥が深い!言語学者が教える英文法

英文法学習

学校での英文法の授業がきっかけで英語嫌いになってしまう人は少なくありません。学校では意味不明の文法用語がタイトルにあり、先生はさらっと説明をするだけで、何が何だかわからないが従わなければならないといったある種の義務を感じたり……

だからといって文法を学習せずに英語ができるようになるかといえば、人によってはあまり現実的・効率的ではありません。感覚や慣れだけに頼らず頭の中で構造をきっちり理解することは外国語を学習するのに大事なことです。

毎日英語学習に勤しんでいるあなたに、ちょっと雑学的知識を。「雑学的」なんていうと研究者に怒られてしまいますが、学校では教えてくれないことです。

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書き換え可能と習ったけれど……

学校の英文法の授業ではじめに出てくる項目、文型。「それを理解していったい何の得があるの?」という疑問を感じさせる、ぶっちぎりナンバーワンの文法項目ではないでしょうか。聞く・話す力の向上に教育がシフトされている今では特に、あまり必要性が理解されない文法項目かもしれません。

その「文型」について、言語学の分野でおもしろい研究がされていました。

おさらいですが、文型は5つあり、このように分けられています。

第一文型 S V
第二文型 S V C
第三文型 S V O
第四文型 S V O O
第五文型 S V O C

※ Sは主語、Vは動詞、Oは目的語、Cは補語

このなかの、第三文型と第四文型の比較で、「言い換えが可能である」と習ったことは覚えているでしょうか。

Mary gave a present to Bob. 第三文型

Mary gave Bob a present. 第四文型

この2文、文型は違いますが、どちらも「メアリーはボブにプレゼントをあげた」という訳になります。

多くの人は「いろんな言い回しがあるんだ」と納得して終了なのですが、言語学者の研究によると、どうやら微妙に意味が異なるのだそうです。

厳密には、書き換えは不可能である、この2文は意味が異なるというのが言語学の見解です。理由や分析は以下の内容以外にもいくつかありますが、ひとつだけ紹介します。

プレゼントはボブの手元に渡ったのか?

上記2文の違いは、「ボブがプレゼントを受け取ったかどうか」に言及しているか否かです。

第三文型の文も、第四文型の文も、日本語に訳すと同じ文になりますが、英語は違いますね。皆さんがすぐにあげられる異なる点は以下の2点でしょう。(本来考慮すべき点は以下の2点だけではありません。これだけでは説明がつかないことがあります。)

  1. 第三文型と第四文型の、動詞以下の語順が異なる
  2. 第四文型にはない、「to」が第三文型にはある

1に関しては、人→物の順番であれば前置詞なしで目的語を2つ並べることが可能という文法ルールに則っているというわけです。(語順を入れ替えることができるか、2つ並べることができるかどうかは、目的語に入る単語の属性によります。)

注目したいのは、2です。

「to」は方向性を示している

I go to school. 私は学校へ行く。

という英文からわかるように、「to」は(schoolという場所に)「向かって」(goする)という意味を持ちます。つまり、第三文型で使われている「to」も「(ボブの方向に)向かって」という意味だと考えられます。

第三文型では、to以下、つまり「ボブ」の方向に向かってプレゼントが移動した、という意味合いになり、さらに言えば、ボブが受け取ったかどうかは話し手ははっきりとわからないということになります。

極端な言い方をすると、第三文型の文では「メアリーはプレゼントをボブの方向へやった」という意味合いになり、ボブがプレゼントをしかと受け取ったかどうかについては言及していないのです。この文で言いたいのは「メアリーがプレゼントをあげた」ことであり、「ボブが受け取ったかどうか」は関係ありません。反対に、第四文型の文ではメアリーがボブにプレゼントを贈り、「ボブはしかと受け取った」ことまで意味します。

英文法は奥が深い!

上記の第三文型と第四文型に関する他の分析内容は、この書籍で読むことができます。論文調で読み応えのある内容ですが、英文法の新しい見方を知ることができる一冊です。

言語学の専門家が教える新しい英文法

言語学の専門家が教える新しい英文法

「聞く・話す」の力を上げるための授業内容に移行していることや、従来の訳読式の授業への批判の高まりも受けて、「文法の勉強なんていらない」とさえ言われてしまうような肩身の狭い学習分野ですが、英語学習において英語のルールや構造を勉強することは、英語力の土台を作ることです。

英語の特徴をつかみ、文法をひと通り理解しておくと英語学習がスムーズになりますので、やたらと響きが難しい文法用語に惑わされず、論理的思考でもって学びましょう。