日本語と英語のことわざの相違点から見る文化の差

重箱の隅をつつく ことわざ

英語を学習する際にただ単語を覚え、文法を覚えるだけでは本質的な理解には繋がりません。文化や背景知識を手に入れてこそ英語を根本的にわかり、上達が望めます。

ここでは、いくつかのことわざを取り上げてほとんど同じ意味のことわざ単語の意味が違うことわざ性格の違いがわかることわざの3つに分けて、日本語と英語の宗教的な影響の違いや環境の違いに言及しつつ、文化を比較しました。

日本語と英語のことわざを比較することで、文化の差異を学び、英語の理解に役立ててください。

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はじめに

外国の言葉を学習するとき、柱となるものは3つあります。
まずは文字。英語の場合はアルファベットが書けて読めるかどうかです。
次に文法です。英語と日本語では主語と述語の順番も、修飾語の位置も違います。
最後に発音です。口の動かし方、音の出し方など発音が美しくないと会話が満足にできません。

これで柱は完成なのですが、実は文化を理解するということもとても大切な要素です。文化の理解なしには本当に英語の理解はありません。ただ文法をなぞっているだけのものになってしまいます。

例として、日本語の「おはようございます」は英語では””Good morning””と訳されます。同様に「さようなら」は””Good bye””です。
一見直訳しても「良い朝ですね」や「よいお別れ」のように思えてしまいますが、本当は””I wish you have a good morning””(あなたが良い朝を過ごすことができますように)、””May God be with you””(あなたの側に神がいつもいますように)の略からできた言葉なのです。

つまり、多神教や無神論派の人が多い日本ではあいさつはただの情景描写ですが、キリスト教を重んじてきた英語圏の彼らは祈りの言葉を使うというように、言葉というのは文化の違いが隠れているのです。
それをことわざから見ていきましょう。

1.ほとんど変わらないことわざ

When In Rome

1.Every fish that escapes appears bigger than it is.

「逃した魚は大きい」という意味です。英語でも日本語でも「魚」なのは興味深いですね。

2.When in Rome,do as the Romans do.

ローマにいるときは、ローマ人と同じように振る舞え。というのが直訳です。
日本語では、「郷に入っては郷に従え」ということわざがぴったり当てはまります。
古代オリエントは、ロムルスが建国したというローマの力が絶大でした。その名残でしょうか?

3.The end justifies the means.

これは少し難しいのですが、「最終目的が手段を正当化する」というのが直訳です。
つまり、最終的に目的にたどり着くことができたのなら、それまでの方法は正解だったことになる、ということです。
終わりよければすべて良し、のようにも見えますが、意訳では「嘘も方便」になります。

4.No pains,no gains.

Gainは得るもの、という意味なので、「痛み無くして得られるものは何もない」という意味になります。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」も似た意味ですね。一休さんで屏風に描かれたのは虎でした。孔子の言動を綴った「礼記」の檀弓下でも、家族を殺したのは虎でした。英語では単純に書かれていますが、虎を例にしていることで日本や中国では虎が恐ろしいものの象徴であったこともわかります。

5.A drowning man will catch a straw.

これもそのままですね。「溺れる者は藁をも掴む」。
余談ですが、英語には「~~な人」というのは”person”や”people”よりも”man””he”が使われることが一般的なようです。

ただし最近の女性の地位向上につれて、”man”という表現はよろしくないとされています。”he or she”などが使われるようになりました。

2.単語が違うことわざ

花見 和菓子

これはとても多いです。育った環境の違いがよく表れておりおもしろいです。

1.It is no use crying over spilt milk.

こぼれたミルクのことをどんなに泣いても無駄である。
日本語では、「覆水盆に返らず」です。このことわざができたのは中国の故事からですが、日本も中国も、牛乳より水が一般的だったのでしょう。特に日本ではきれいな水が簡単に得られますが、英語圏ではそうでもなかったようです。馴染みのあるものがことわざになっているという背景も伺えます。

2.Bread is better than the song of birds.

パンは鳥の歌よりも良いなあ、という意味です。
簡単ですが、日本語では「花より団子」。
昔マリー・アントワネットが「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と言ったり、古代では無産市民の支持を得ようと諸侯が頑張って「パンと見世物」を駆使したりと、やはり欧米では「食べ物」と言ったら「パン」なのです。
対して日本の「花より団子」は、日本人ならみんな「花」は「桜」だとわかります。なんとなくの共通認識も知ることができました。

3.Bad news has wings.

悪いニュースは飛ぶように広まる、という意味でしょう。
英語圏では「神」の思想が根本的にあります。ゆえに「天使」というものも一般的であったのでしょう。そのためwing(飛ぶ)になっています。
日本の古代からの神様に、羽が生えた神は誰一人としていません。日本語に意訳すると「悪事千里を走る」です。男性が馬に乗って必死に殿に報せを届けようとしている情景が目に浮かぶようです。

4.It’s a piece of cake!

「それはひとかけらのケーキだ!」という意味になっていますが、日本語だと「朝飯前だ!」というのが良い訳です。

3.性格の違いがわかることわざ

敬語の有無からもわかるように、日本語は相手に気を遣う言葉であると言えます。
それゆえ、あまりはっきり言わずに濁すことがとても多いです。英語と日本語を比較することで、欧米の人々の積極性が見えてきますし、対する日本人の消極性もわかります。
また、「神」の思想も見てとれます。
「初めに」の部分でも述べたように、英語には神、とくにキリスト教の思想が深く根付いているため、神に関わることわざも多いです。

1.Do to others what you would be done by.

「人にされたいことをしなさい」という意味です。
イエスキリストも、隣人愛を説き、人にされて嬉しいことを人にしなさいと教えました。
キリスト教の背景も見ることができます。
対する日本語では、「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」という言葉になります。
行動を促すか止めるかの違いですが、おもしろい相違点であると言えます。

2.Heaven(God) helps those who help themselves.

天(神)は自ら助くる者を助く。とても有名なことわざです。
ここでも神が出てきました。日本では類似の言葉に「人事を尽くして天命を待つ」なんて言葉もありますね。
自分で努力した人間を最後に神や天は救ってくれる、味方してくれるということです。
受験生に向けて書く英語の先生も多いのではないでしょうか。

3.He who is in hell knows not what heaven is.

hell(地獄)という単語と、heaven(天国)という単語が出てきます。
地獄にいる者は天国を知らない、という意味です。
日本では今は天国も地獄も一般的ですが、昔はそのような思想はなく、やはり西洋思想です。(日本では黄泉の国でした)
これを意訳すると「井の中の蛙、大海を知らず」になります。井戸が普及しており、周りを海に囲まれた日本独自の言い回しであります。

最後に

ここまでいくつかのことわざを比較してきました。
最初に述べた通り、本当に英語を理解するには、ただただ教科書をなぞるだけでは無理です。
どのような思想の元、どのような環境の元この言葉は生まれたのか、全てに理由があります。

また、このように英語と比較することで、日本語の見直しにも繋がります。
他にもさまざまなことわざがありますので、ぜひ調べてみてください。

最後にマザー・テレサの神にまつわる名言を記しておきます。
God doesn’t require us to succeed;he only requires that you try.
(神様は私たちに成功を望んでるわけではありません。ただ挑戦することを望んでいるだけなのです。)