電子辞書クイックショナリーの有用性について

  • Tarim

英語の辞書とペン

電子辞書の一種であるクイックショナリーを使えば、書かれた英単語の意味を極めて迅速に知ることができますので、通勤途中の電車の中などでも使える便利な道具です。

ただし、小型であるがゆえに使い勝手の上で不便な点も少なくありません。

どういう点が便利であり、どういう点で不便利なのかを理解し、今後利用していくことが大事です。

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1.クイックショナリーとの出会い

1-1. 電子辞書との遭遇

約15年前、60歳を超えた私は、第二の人生として選んだ英語教師としての勤めを、ある私立高校で開始しました。

自分も45年前はこうだったのかなあと、若い高校生に接しながら遠い昔のことを思い出しつつ、生徒がほとんど全員、小さな電卓のようなものを叩きながら授業に参加していたのを奇妙に感じたものです。

そうです、それは電子辞書でした。そういうものが世の中に出現していたことは知っていましたが、ほとんど全員が持つほど普及していたというのは意外でした。
中に、家が貧しくて買ってもらえないのか、電子辞書を持たず、昔の我々のように辞書をひいている生徒がいて、私に言いました。「先生、電子辞書よりこっちの方がいいよね」と。私は答えました。「その通りだよ。電子辞書は単語の意味を早くひけるから確かに便利だ。しかし、普通の辞書は、単語の全部の意味を一望のもとにつかむことができる上、その前後にある単語の意味も目に入る。電子辞書はこういったことができない。語学の勉強という点からはむしろ普通の辞書の方がいいと先生も思っているよ。」

私が生徒にそのように答えたのは、一つには確かにクラスメートに差をつけられた形の少年を元気づけたい、という気持ちがあったからでもありましたが、本当に、普通の辞書の方が電子辞書より優れている、と思う所があったというのも事実です。

それに先生の授業を聞いているのか、聞いていないのかわかりませんが、電子辞書に熱中している生徒達を歯痒く思ったからでもあります。

1-2. 新しい辞書を求めて

電子辞書に対して好感を持たない、そのような私が電子辞書を欲しくなったのは、先生を始めて4~5年経ったころでしょうか。

私は勉強家をもって自認していましたので、通勤途中、電車の中でも英字新聞とかTIMEを読んでいました。

そのような時、必ず、忘れたり、忘れかかったり、あるいはこれまで遭遇したことがないと思われるような単語に出会うのです。

電車の中で辞書をめくるのも、何となくやりすぎの感がして気がひけます。そういう単語を、さっとなでたら意味を教えてくれるような機械はないんだろうかと思うようになりました。

そんな夢のような機械なぞあるまいと、捨て鉢な気持ちでインターネットで調べると、なんと世の中にそういう電子辞書があったのです。それがクイックショナリーでした。しかもそれが通販で買えたのです。

私は乏しいポケットマネーをはたいて早速それを買い求め、以来10年以上になるでしょうか、今も愛用しながら英語の勉強に役立てています。

2. クイックショナリーとは

2-1. 機能

クイックショナリーとは大きなペンのような形をしていますが、ペン先に相当する部分に光学式のスキャナーが内蔵されています。この部分を文字列にあてて、ゆっくりなぞります。そうすると本体についている6cm×2cmほどの小さな液晶画面に、なぞられた部分の英語文字とその意味が現れる、というものです。

製品名としては、ペン型スキャナー辞書というのが正しい名称のようですが、ある会社が開発し、その商品名にQuicktionaryという名前をつけ販売されたことから、私はこの種の電子辞書をクイックショナリーとよんでおります。

コピー機がいつのまにかゼロックスと呼ばれるようになったのと同様、いずれこの種の製品は通称クイックショナリーと呼ばれるようになるかもしれません。

本当にこの種の電子辞書はquick dictionaryと呼ぶにふさわしく、言葉として一般化してもまったくおかしくないと思われるからです。

2-2. 使い勝手

2-2-1. 便利な点

クイックショナリーの一番の有難いところは、ポケットにいれて携行できることと、その速さです。

電車の中でもポケットからちょっと出して、わからない単語をちょっとなぞればたちどころにその意味がわかる、という点です。

通勤途中でも英文を読むような人におすすめの品です。

あるボタンを押せばその単語を声を出して読んでくれますから、発音を知りたいときも役立ちます。ただしこれは電車の中では控えたほうがいいかもしれません。

読み取れる文字の大きさには制限があり、小さ過ぎたり、大き過ぎたりする文字は読み取れないこととなっていますが、実際にはそのため使えず不便を感じたということは今まで
ありません。

2-2-2. 不便な点

文字をなぞるとその単語の意味が液晶画面にでてきますが、画面が小さいため、3行分しか出てきません。その先を読みたいときは下へどんどんスクロールしていく必要があるのですが、単語の意味がたくさんあるときはこれが大変です。
名詞の場合であれば、たとえばmineには「私のもの」「鉱山」「地雷」などいろいろ意味があっても、文脈から自分が探している単語の意味はどれかを探し当てることは難しくありません。
しかし動詞となると、ある場合など、様々な意味が山ほどありますので、自分が読んでいる文の文脈に最適な意味がどれなのかを、往きつ戻りつスクロールしながら探し当てることは、辞書を引くのと比べ簡単ではありません。時間もかかります。

たとえばinformという単語を引いたとしましょう。第1の「知らせる」という意味が現れてから第2の「~で満たす」の意味が出てくるまで10回スクロールしなければなりません。

クイックショナリーは単4の電池を2本使います。外部電源は使えません。従って長時間使うときは電池が切れはしないだろうかということが常に気になります。

使うときスイッチを入れ、終わったら切るという使い方もあるでしょうけど、結構面倒くさいものです。

3. ペン型スキャナー辞書に望まれること

私たちが、どういうときクイックショナリーのようなペン型スキャナー辞書が欲しいと思うのか、について考えて見ますと、やはり私がそう思ったときのような状況のときではないでしょうか。

英文を読んでいて明白な意味を忘れた、とか、うろ覚えで不確か、というようなときです。

特に私のように年をとってきますと、神経回路がどんどん消滅して、この前までちゃんと覚えていたものがうろ覚えになったり、思い出せなくなったりということがたくさん出てきます。

さてblasphemyとは何だったかなあ。確か崇高な人と係わり合いのある言葉だったけど、なんだったか思い出せない、と苛立ちをおぼえます。このようなとき、それは不敬とか冒涜だよと一言耳元でささやいてくれると助かるのです。

動詞にしても意味にプラスして、それぞれの例文まで挙げるのでなく、あり得る訳語をずらりと羅列してくれさえすれば自分で適切な訳語を選択できるのです。

さきほど挙げたinformの場合でも、「知らせる」「~で満たす」「~に影響を与える」の三つくらいを訳としてあげてくれればクイックショナリーとしての役は十分に果たせると思います。

クイックショナリーの本体にはGENIUSということばが併記されています。
実は、GENIUSの英和辞書の内容がそのまま取り込まれているからなのです。

前にも書きましたが、スクロールしながら英和辞書に書いてあることを最後まで読むということはとてもできません。
このように考えますと、ペン型スキャナー辞書にはせいぜい1,2回スクロールすればすむくらいの意味を収納し、だんだん記憶力が薄れていく人たちの記憶を取り戻すための道具として改善され、普及していくのが今後のあり方ではないかと思われます。

これから深く英語の勉強をしなければならない学生は、やはり座右に辞書を置き、単語の一つ一つの意味をじっくり学習する必要がありますから、ペン型スキャナー辞書は彼ら向きのものではありません。

しかし彼らもこういった辞書を便利と考えるときがいずれの日かめぐってくることでしょう。