「お疲れさま」を例に、英語上達に大切なシンプルな文への変換力を解説

お疲れさま イメージ

長い時間を英語学習に費やしていても、実際に英語を使う場面に遭遇すると思うように英語が出てこないという人も多いのではないでしょうか。
その原因は、複雑な「日本語のニュアンスをそっくりそのまま英訳しようとしてしまう」ことにあります。

英語上達のためには、もととなる日本語をできるだけシンプルな文に変換し、自分が知っている単語や文法を積極的に活用することが重要です。

では、「シンプルな文に変換」し、「知っている知識を活用する」とはどういうことなのか。

本文では「お疲れさま」「いただきます」といった、具体的な言葉の例を挙げて解説をしていきます。

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1.英語上達の為に必要な力とは

1-1.シンプルな文への変換力

英語を学習する時に、英単語や文法を中心に取り組む方は多いですよね。しかし、多くの単語や文法を学んでいるにもかかわらず、実際に英語を使用する場面では、何も発言できないというケースも多いのではないでしょうか。

なぜ習得した知識を実践的に活用することができないのか。その原因は、「もととなる日本語をそっくりそのまま英訳しよう」としてしまうことにあります。

例えば「いただきます」「ごちそうさま」という言葉は、英語にはない表現として有名です。このような英語に存在しない言葉を、そのまま英訳しようとしても不可能な訳です。

そこで、英語にある表現、もしくは自分の持っている知識で、どのような表現ができるか…という変換作業を行うことが重要になります。

例えば映画や小説の翻訳の場合、
「いただきます」をIt looks so delicious.(おいしそう)、
「ごちそうさま」をIt was so good.(おいしかった)やThank you for cooking for me.(作ってくれてありがとう)といった表現をすることがあります。

「英語でどのように言えばよいのか分からない」という時には、単に英訳しようとするのではなく、いかにシンプルな文に変換して英語に直すか、という視点を持つことがとても大切です。

1-2.持っている英語知識の活用力

新しい語彙を学ぼうと、英単語の学習に力を入れるのは決して悪いことではありません。しかし、「なかなか覚えられない単語・文法の暗記に時間をかける必要はない」というのが私の考えです。

テキストや単語帳で英語学習をしていると、時には覚えにくい単語や文法にも遭遇するものです。

中には、日本語でもピンと来ない単語や、ほとんど使わないのでは…と思ってしまうような内容が含まれていることもあります。

このように、自分には難しいと感じる英単語や文法を一時的に暗記しても、実際の場面で使いこなせることはほとんどありません。

そこで、おすすめの学習法として、「知っている単語・文法を駆使して英文を作る練習をする」という方法があります。

実際のところ、ほとんどの意思伝達は、中学校3年間で習うレベルの英単語・文法が身についていれば可能です。

例えば「仕方がなかった」という一見複雑な言葉を英語にしたい時はどのような表現ができるでしょうか。

仕方がない」を英語辞典で引くと「helplessly、reluctantly」という単語が出てきます。しかし、これらの単語は決してっシンプルな単語とは言えません。一時的に暗記しても忘れてしまいがちな単語とも言えます。

そこで、「仕方がない」という言葉をシンプルに変換してみます。「仕方がない」というのは、「ほかに選択肢(チョイス)がなかった」ということなので、英語ではI had no choice.と表現することができます。全て中学校一年生レベルの簡単な単語で作られた文ですが、「仕方がなかった」というニュアンスがしっかり伝わりますよね。

このような変換作業は、もちろんほかの言葉、文においても可能です。新しい単語を学び語彙力を増やすのもよいのですが、まずは自分のよく知った単語や文法で、様々なニュアンスを伝える練習をすることで、実際に「使える英語力」が身についていくのです。

2.「お疲れさま」を例にシンプルな文への変換プロセス

2-1.「お疲れさま」は多様性のある言葉

上記1-2でとりあげた「いただきます」「ごちそうさま」「仕方がない」のように直接的に英語に値する言葉がないものとして、「お疲れさま」もあります。

日本では毎日のように使われており、最近では「相手の労をねぎらう」という本来の使い方にとどまりません。

電話での第一声や別れ際の一言などに用いられる便利なあいさつ表現としても使われることが増えています。また「お疲れさま」は多くの英語学習者が「これは英語で何と言うのだろう」と疑問に思う代表的な言葉の一つです。

「お疲れさま」は英語表現にはない日本語の中でも、特にシチュエーションに合わせた訳が求められる言葉です。いくつか例を見てみましょう。

2-2.一見複雑な「お疲れさま」を代用できる表現とは

例えば、上司が部下に向かって「お疲れさま」と声をかけるシチュエーションでは、
Thank you for your hard working.(一生懸命働いてくれてありがとう)
と表現できます。

もしくは、
Well done.Good work today!
などよりシンプルな言葉を用いることもできます。どれも「よく働いてくれたね」「よくやった!」というニュアンスになります。

退社時に「お疲れさまでした」と声をかけて会社を後にするようなシチュエーションでは、Have a good night.(素敵な夜を過ごしてね)も自然な表現となります。

また、日本では、ビジネスメールの冒頭に「お疲れさまです」が用いられるケースも多いですよね。

ビジネスメール冒頭の「お疲れ様です」はいわば出だしのあいさつです。
いきなり本題に入るのは唐突すぎるということで、ワンクッションおく役目を果たします。

この場合は、
Hi,how are you doing?
(お元気ですか)
Hi,how’s everything?(調子はどうですか)
のように、あくまでシンプルに一般的な挨拶表現を用いるケースが多いです。

日本語では一言で様々なシーンに使用できる「お疲れさま」という言葉ですが、英語にする場合はシチュエーションに合わせて適切な表現を選択する必要があります。

一見難しそうだと感じるかもしれませんが、上記で挙げた例からも分かるように、置き換えられる表現は意外と簡単なものばかりです。

例えば、 Hi,how are you doing? は、中学校一年生の教科書に出てくるフレーズですね。ところが、私たちが実際に学校で学ぶ時は、How are you?=お元気ですか?と習いますし、その答えとして I’m fine thank you. とアンサーする…というように、決められたパターンでのみインプットされがちです。

このことが原因で、せっかく十分な数の単語やフレーズを学んでも、自分の知識にインプットされている通りのシチュエーションでしか使用できなくなってしまうのです。

私たちがすでに学んでいる英語の知識というのは、実は様々なシチュエーションに代用できるものばかりです。

一見困惑しがちな「お疲れさま」もすでにあるシンプルな知識でいくらでも表現できるということがお分かりいただけたかと思います。

あとは、いかにその場のシチューションに合わせてシンプルな表現に変換できるかが大切になってきます。

まとめ

ここまで、一見英語に表現することが複雑に感じる言葉を、シンプルに変換してみることで、ほとんどの意思表現は可能であることをお伝えしてきました。

本文では「いただきます」「ごちそうさま」「仕方がない」、そして「お疲れさま」のように英語表現にはない言葉を例に出しました。しかし、すでに相当する英語が存在する言葉を英語にする時も、プロセスは同じです。

例えば「仕事をするのがめんどうくさい」と言いたい時に、むりに「めんどうくさい」という英単語を導き出さなくてもよいのです。

頭を柔らかくして、シンプルに変換できないかを考えます。

「めんどうくさい」ということは、シンプルに考えると「やりたくない」ということ。
つまり I don’t want to work. (仕事をしたくない) でもニュアンスを十分に伝えることができます。

英語を上達させるためには、自分の口でアウトプットをすることがとても大切なのです。

どんなに簡単な単語や文法でもよいので、すでに知っている知識をフル活用し、どんどんアウトプットすることで、英語上達のスピードはアップします。

英語学習者の中には、ネイティブと話す際にに、「こんなに簡単な単語しか使えないことが恥ずかしい」と感じる方もいるようですが、気にする必要は全くありません。

洋画や実際のネイティブの日常会話に集中してみると気付くのですが、意外なことにネイティブの間で行われている会話も、ほとんど私たちが中学校で学んだレベルの単語や文法で成り立っていることが多いのです。

新しい英単語やフレーズを次々にインプットすることは決して悪いこととは言いませんが、「今ある知識を活かしてアウトプットする」ことも英語上達の大きな一歩です。

そして「今ある知識を活かしてアウトプットする」ための方法として、ここまで例を取り上げて解説してきた「一見複雑に感じる文をシンプルに変換する」という練習をして欲しいと思います。
この方法を実践することで、確実に、「使える英語力」が身についていくはずです。