読書の秋!リトル・ブラック・クラシックスに挑戦してみない?
イギリスの出版社ペンギンブックスより発売されている【LITTLE BLACK CLASSICS】をご存じですか?
ナントこれだけで、英語学習欲、読書欲、知識欲、もしかしたらコレクション欲まで満たしてくれるかもしれないシリーズなのです。
ちょっと気になりますよね!
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【リトル・ブラック・クラシックス】とは?
ペンギンブックスは、最初のペーパーバックを世に送り出してから今年で80周年を迎えました。それを記念して発売されたのが【LITTLE BLACK CLASSICS】です。全80冊、1冊80ペンス(Amazon Kindle版で165円!*)という「80」つながりのシリーズです。
表紙は黒をメインにトレードマークのペンギンを配置した、シンプルで統一感のあるデザイン。サイズはヨコ約11cm×タテ約16cm、ページ数50~60ページ程という、洋書としてはとてもコンパクトでセンスの良い装丁となっています。(しかも80ペンス!)
正直、その気がなくても「ちょっと読んでみようかな…」と思わせてしまう、魔性のルックスと言えましょう。
そんなキュートな外見ながら、内容は硬派【PENGUIN CLASSICS】からのセレクトです。イギリス国内外の世界(古典)文学を数多く送り出してきたレーベルで、日本でいう岩波文庫を思い浮かべていただければよいかと思います。
「ええー、日本語でも遠慮したいよ!」と叫びたくなりますが、諦めるのはまだ早い!というより勿体ない!セレクトの妙とでも言いましょうか、不思議と頑張れそうな品揃え、編集方針なのです。
リトル・ブラック・クラシックスの絶妙な切り口
海外古典文学と言えば、暗い、長い、つまらない、わけわからない…とネガティブ感想オンパレードになりがちです。が、そのほとんどのお悩みが、【LITTLE BLACK CLASSICS】には当てはまりません。
暗い→小説、詩、紀行文、日記、金言、俳句、漢詩、エッセー、童話など様々なジャンルを取りそろえているため、暗くない本を選ぶことができます。もちろん暗い本も選ぶことができます。
長い→1冊は50~60ページ、1冊に短編1~5作品を収録しているものが多く、海外文学の入門編として親しみやすいものとなっています。ボリュームの目安として日本の作品を挙げると、#56『The Life of a Stupid Man』では、芥川龍之介の作品から『或阿呆の一生』、『点鬼簿』、『藪の中』の3作品を収録しています。(英訳は村上春樹作品の翻訳を手掛けるジェイ・ルービン氏によるものです。)
つまらない→そこは主観の問題ですので、何とも…ですね。80周年記念ということで、本を読む人にも読まない人にも楽しんでもらうための配慮なのか、著者名からたどって「知ってる人は知っている」的な良作を並べた雰囲気があります。(バルザックなら『ゴリオ爺さん』ではなく#41『無神者のミサ』を収録、アンデルセンでは『人魚姫』や『裸の王様』ではなく#23『火うち箱』をセレクトするなど)
わけわからない→芥川龍之介の『藪の中』などは、逆に英文の方が分かりやすいくらいです。作品によっては、英語の持つ明確さに感謝というより感激するかもしれません。
シリーズは作者ごとに編まれており、収録作品は主著のジャンルにこだわることなくセレクトされています。音楽家モーツアルトの#51『My Dearest Father』は父とモーツアルトの間で交わされた手紙の英訳ですし、『種の起源』で有名なダーウィンの#67『It Was Snowing Butterflies』は『ビーグル号航海記』からのセレクトです。本のタイトルや、各本に添えられた本文から抜粋した1文も、好奇心をそそられるものとなっています。次の本の作者は誰だと思いますか?
- タイトル:Lips Too Chilled
- 1文抜粋:Wake, Butterfly…
正解は松尾芭蕉でした。恥ずかしながら「こんな俳句あったっけ?!」と、思わず調べてしまった私です。
取りあえずタイトルだけでもチェック!
文章はオリジナルが英語の場合は英語のまま、その他言語の場合はオリジナル作品を忠実に英訳したものになりますから、Penguin Readersを読むようにはいかないかもしれません。それでもペンギンブックスの海外古典文学沼への手招きっぷりが一生懸命過ぎて、「新しい世界が見えるかも…」と、つい期待してしまいそうになりますよね。
たとえ、うっかり手を出してしまっても、60ページくらいなら何とか読み切りますし、気に入ったのなら、同じ作者の別の作品に挑戦してみても良いわけです。(極端な話、岩波文庫に頼るのもOKだと思います。)
というワケで【LITTLE BLACK CLASSICS 】全リストを日本語タイトル付でご紹介します。本選びの参考になれば嬉しいです。
日本語タイトルは既に邦訳出版されているものに準じました。(確認が取れなかったもののみ直訳しています。)
# | 日本語タイトル | 著者名 | 代表作 | 原題 |
1 | ミセス・ロージーと神父 | ボッカチオ | デカメロン | Mrs Rosie and the Priest |
2 | かわせみが火と燃えて | ホプキンズ | – | As Kingfishers Catch Fire |
3 | 蛇舌グンラウグのサガ | 中世アイスランドの散文作品群 | – | The Saga of Gunnlaug Serpent-tongue |
4 | 芸術の一分野として見た殺人 | クインシー | 阿片服用者の告白 | On Murder Considered as One of the Fine Arts |
5 | ニーチェの名言~愛と憎しみについて | ニーチェ | ツァラトゥストラはかく語りき | Aphorisms on Love and Hate |
6 | トラフィック | ラスキン | 近代画家論 | Traffic |
7 | 聊齋志異 | 蒲松齢 | 聊齋志異 | Wailing Ghosts |
8 | 穏健なる提案 | スウィフト | ガリバー旅行記 | A Modest Proposal |
9 | 中国唐朝の3詩人 | 杜甫・李白・王維 | – | Three Tang Dynasty Poets |
10 | 夜の浜辺にて | ホイットマン | 草の葉 | On the Beach at Night Alone |
11 | 桜の下の杯 | 吉田兼好 | 徒然草 | A Cup of Sake Beneath the Cherry Trees |
12 | 敵の使い方 | グラシアン | エル・クリティコン | How to Use Your Enemies |
13 | 聖アグネス祭前夜 | キーツ | エンディミオン | The Eve of St Agnes |
14 | 恋しい君 | ハーディ | 日陰者ジュード | Woman much missed |
15 | ファム・ファタール | モーパッサン | 女の一生 | Femme Fatale |
16 | 蛇と真珠の国の旅 | マルコ・ポーロ | 東方見聞録 | Travels in the Land of Serpents and Pearls |
17 | カリグラ | スエトニウス | ローマ皇帝伝 | Caligula |
18 | イアソンとメディア | ロドスのアポローニオス | アルゴナウティカ | Jason and Medea |
19 | オララ | スティーヴンソン | 宝島 | Olalla |
20 | 共産党宣言 | マルクスとエンゲルス | 共産党宣言 | The Communist Manifesto |
21 | トリマルキオの饗宴 | ペトロニウス | サテュリコン | Trimalchio’s Feast |
22 | 恐ろしい事件が卑しい肉屋の犬によってあばかれた次第 | へーベル | ライン地方の家の友 | How a Ghastly Story Was Brought to Light by a Common or Garden Butcher’s Dog |
23 | 火うち箱 | アンデルセン | 子どものための童話集 | The TinderBox |
24 | 百の悲しみの門 | キップリング | ジャングルブック | The Gate of the Hundred Sorrows |
25 | 地獄の九圏 | ダンテ | 神曲 | Circles of Hell |
26 | 路地のパイ売り | メイヒュー | ロンドン路地裏の生活誌 | Of Street Piemen |
27 | 夜鶯は酔った | ハーフィズ | ハーフィズ詩集 | The nightingales are drunk |
28 | バースの女房 | チョーサー | カンタベリー物語 | The Wife of Bath |
29 | いかに我々は同じひとつのことを泣き、また笑うのか | モンテーニュ | エセー(随想録) | How We Weep and Laugh at the Same Thing |
30 | 夜の恐怖 | ナッシュ | 悲運の旅人 | The Terrors of the Night |
31 | 告げ口心臓 | ポー | モルグ街の殺人 | The Tell-Tale Heart |
32 | カバの宴 | キングスレー | 西アフリカの旅 | A Hippo Banquet |
33 | 美しきカサンドラ | オースティン | 高慢と偏見・エマ | The Beautifull Cassandra |
34 | すぐり | チェーホフ | 桜の園 | Gooseberries |
35 | 皆行ってしまい、私はここに残らねばならない | コールリッジ | 老水夫の歌 | Well, They are gone, and here must I remain |
36 | うわべだけの、疑わしい、不完全な、メモ | ゲーテ | ファウスト | Sketchy, Doubtful, Incomplete Jottings |
37 | グレート・ウィングルベリーの決闘 | ディケンズ | クリスマス・キャロル | The Great Winglebury Duel |
38 | モルディブ海のサメ | メルヴィル | 白鯨 | The Maldive Shark |
39 | 老いた子守り女の話 | ギャスケル | 北と南 | The Old Nurse’s Story |
40 | 鋼鉄の蚤 | レスコフ | 魅せられた旅人 | The Steel Flea |
41 | 無神論者のミサ | バルザック | 人間喜劇(ゴリオ爺さん) | The Atheist’s Mass |
42 | 黄色い壁紙 | ギルマン | 黄色い壁紙 | The Yellow Wall-Paper |
43 | 忘れるな、体よ… | カヴァフィス | 詩(Ποιήματα) | Remember, Body… |
44 | やさしい女 | ドストエフスキー | 罪と罰 | The Meek One |
45 | 純な心 | フローベール | ボヴァリー夫人 | A Simple Heart |
46 | 鼻 | ゴーゴリ | 死せる魂 | The Nose |
47 | ロンドン大火 | ピープス | 日記(1660~1669) | The Great Fire of London |
48 | 報い | ウォートン | エイジ・オブ・イノセンス | The Reckoning |
49 | 絨毯の下絵 | ジェイムズ | ねじの回転 | The Figure in the Carpet |
50 | 死すべき定めの若者のための賛歌 | オーエン | 死すべき定めの若者のための賛歌 | Anthem for Doomed Youth |
51 | 最愛の父 | モーツアルト | フィガロの結婚 | My Dearest Father |
52 | ソクラテスの弁明 | プラトン | ソクラテスの弁明・国家 | Socrates’ Defence |
53 | ゴブリン・マーケット | クリスティーナ・ロセッティ | ゴブリン・マーケット | Goblin Market |
54 | 船乗りシンドバッド | アラビアンナイトより | – | Sindbad the Sailor |
55 | アンティゴネー | ソポクレス | オイディプス王 | Antigone |
56 | 或阿呆の一生 | 芥川龍之介 | 蜘蛛の糸・地獄変 | The Life of a Stupid Man |
57 | 人にはどれほどの土地がいるか | トルストイ | 戦争と平和 | How Much Land Does A Man Need? |
58 | レオナルド・ダ・ヴィンチ | ヴァザーリ | 画家・彫刻家・建築家列伝 | Leonardo da Vinci |
59 | アーサー・サヴィル卿の犯罪 | ワイルド | ドリアン・グレイの肖像 | Load Arthur Savile’s Crime |
60 | 月の老人 | 沈復 | 浮生六記 | The Old Man of the Moon |
61 | イルカとクジラとハゼ | イソップ | イソップ寓話 | The Dolphins, the Whales and the Gudgeon |
62 | 唇寒し… | 松尾芭蕉 | おくのほそ道 | Lips too Chilled |
63 | 私のまわりに夜の闇は深まり | エミリー・ブロンテ | 嵐が丘 | The Night is Darkening Round Me |
64 | 明日 | コンラッド | 闇の奥 | To-morrow |
65 | フランシス・ドレーク船長の世界一周旅行 | ハクルート | イギリス国民の主要航海記 | The Voyage of Sir Francis Drake Around the Whole Globe |
66 | 絹のストッキング | ケイト・ショパン | 目覚め | A Pair of Silk Stockings |
67 | 舞いしきる蝶の群れだった | ダーウィン | 種の起源 | It Was Snowing Butterflies |
68 | 強盗のお婿さん | グリム兄弟 | グリム童話 | The Robber Bridegloom |
69 | われ憎み、かつ愛す | カトゥルス | 詩集(カルミナ) | I Hate and I Love |
70 | キルケーとキュクロプス | ホメロス | イーリアス・オデュッセイア | Circe and the Cyclops |
71 | イル・デュロ | D.H.ローレンス | チャタレー夫人の恋人 | Il Duro |
72 | ミス・ブリス | マンスフィールド | 園遊会 | Miss Brill |
73 | イカロスの失墜 | オウィディウス | 変身物語 | The Fall of Icarus |
74 | そばに来て | サッポー | アフロディテへの賛歌 | Come Close |
75 | 美しい国のカシヤン | ツルゲーネフ | 猟人日記 | Kasyan from the Beautiful Lands |
76 | ああ、残酷なアレクシス | ウェルギリウス | アエネイス | O Cruel Alexis |
77 | すべったプレパラート | H.G.ウェルズ | タイムマシン・宇宙戦争 | A Slip Under the Microscope |
78 | カンビュセスの乱心 | ヘロドトス | 歴史 | The Madness of Cambyses |
79 | シヴァ神を語る | ヒンドゥー教聖人4名 | – | Speaking of Siva |
80 | ダンマパダ(法句経) | 原始仏典 | – | Dhammapada |
*価格について:ペーパーバック版は国内の書店にて370円~販売されていることを確認しています。