下地を作る!スピーキング上達のコツ
英語が話せるようになるには、外国人の友だちを作ること、実際に海外に行くこと、英会話スクールに通うこと、と「言うは易し、行うは難し」と言えるアドバイスをよく耳にしますが……
筆者は常々、疑問に思っていることがありました。
それは、英語学習をする際、母語でできていることが英語になるとできなくなるのはなぜかということです。
母語で会話をする際、「単語(表現)をたくさん知っていれば会話が通じる」と思ったことなんてないのに、英語となると「単語(表現)がわからないから言いたいことが言えない!」と緊張してしまうのはなぜなのでしょうか。
筆者は、6年以上学校で英語を学んだはずの日本人が英語を話せないと”思う”のは、英語を話し慣れていないことや恥ずかしさに加えて、母語と英語を別物として扱いすぎているからだと考えています。
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見事なコミュニケーション能力を発揮した少年
筆者のアメリカの友人から聞いた話ですが、こんなことがあったそうです。
日本にある子供向け英会話スクールに勤務していた友人は、毎日日本人の子どもと英語で接していたのですが、彼らの英語でのコミュニケーション力に驚かされたといいます。友人が教えてくれた話の中で筆者が最も驚いたのは、10歳前後の少年の話でした。
友人と少年が会話をしている中で、少年は自分の知らない単語を言わなければ会話が成立しない場面になったそうです。少年は「はしご」と言いたかったようですが、「ladder」という単語を知らなかったのです。
多くの人(大人)の場合、このような状況に直面すると、あえて言おうとしていたことを言わない作戦に出るのではないでしょうか。何も言わなければ、言葉に詰まることがないからです。詳しい説明を避け、なんとなく会話を続けた経験はありませんか?
少年の場合は違いました。少年ははしごの特徴を英語で伝えたのだそうです。「上に登る時に使う道具」と。それで友人は「はしご」のことだとわかったそうです。この話を聞いた時、大人がなぜ英語が話せないと”思う”のかがわかったような気がしました。
単語を知っていれば、語順がめちゃくちゃでもなんとかなるという考え方もあります。しかし、コミュニケーションの方法はひとつではありませんし、少年の方法の方がはるかに英語力もコミュニケーション力も伸びる方法です。自分の力を最大限使って伝えようとするからです。また筆者個人的には、単語を暗記することに労力を使うよりも、知っている文法と単語を使いまわした方が楽だと思っています。ladderを知らなくても、thingとclimb up(またはgo up)が言えれば伝わるのです。
筆者自身ボキャブラリーが少なく、単語を覚えなければといつも焦っていましたが、アメリカで暮らしてみると、自分の知っている単語でなんとかなるものだと気づきました。そして、日本語では一言で言えても英語では3語以上を併せて言わないと同じ意味にならない言葉がたくさんあることに気づいてからは、何でもかんでも日本語を英語に訳そうとは考えなくなりました。少年の話は、筆者にとってまさに目から鱗だったのです。
知らない単語があることを恥ずかしいと思うことはありません。日本語でだってド忘れして出てこない言葉があるもので、英語で説明するのはちょうどド忘れして言葉が出てこない時と似た状況だととらえればいいのです。
説明できるようになるために
知らない単語を説明したい時や、複雑な気持ちを日本語だと一言で言い表せるのに英語だとピンとくる単語が見当たらないという時は、いくつかの知っている単語を並べればいいとわかると、今度は違う課題が出てきました。それは、「一言で言い表せるその単語は、どのように詳しく説明するのが正しいのだろう」ということです。自分がどれだけ無頓着に日本語を話していたのかを反省するようになりました。ここで、次のステップです。
単語が出てこなくても、きちんと説明できればそれで伝わります。しかし、説明が正しくなかったり十分でなかったり、説明するための言葉が見つからないと手詰りです。日常で友人と交わす話題はもちろん、いろんなことに対して日本語でもきちんと説明・主張できるようにしておくように心がけましょう。日本語力を上げるということですね。これは、英語を話す機会が少ない日常だからこそできることです。「懐かしい」「切ない」といった日本人が好むこれらの感情を、場面に応じて英語で説明できますか?
ちなみに、「(あの頃が)懐かしい」と言えば「nostalgic」と思い浮かびそうですが、日常生活ではnostalgicではなく「Those were the days.」と言い表します。元々は「いつでも過去は輝いている」といったような意味です。筆者はこのフレーズを知らない時には「過去にあったことが恋しくなる感覚」と説明していました。
英語でパッと話を振られてモゴモゴ……ということがないように、すぐに何でもいいから言えるように日頃心がけておきましょう。意見を「言わない」のと「言えない」のとは違います。言葉が変わると少し性格が変わる、ということは筆者にも経験がありますが、母語でできないことが英語ではできるなんていうことはそうそうないのです。
話しやすいトピックを見つけよう
普段からおしゃべりな人や、自己主張をきちんとできる人はあまり困らないかもしれませんが、自分のことをあまり話すのが好きではなかったり、会話をはずませるのが得意ではない人は、「これだったら話せる」というトピックを見つけましょう。
「英語で日記を書く」というのと似た発想ですが、気持ちや感情などの抽象的な事柄を言い表すことに焦点を置くのではなく、具体的な行動、さらに言えば身近な内容に焦点を当てることで多少話しやすくなります。
どこへ誰と行った、人混みがすごかった、どの店がセール中だった、など
例えば、取引先に関する情報の交換や大学の授業に関する意見交換などは、話し手も聞き手も興味のある情報ですので、いいトピックになるでしょう。自己紹介も含めて、日本語でもなかなかうまく話せないトピックは選ばずに、パッと意見が言えるような事柄をトピックに選びましょう。
自分に厳しくないと英語学習はなかなか続きませんが、できないことばかりに目を向けず、自分の長所、短所をうまく利用して少しずつステップアップしていきましょう。